今日こそ絶対に自殺します。
ーーーそんなときだった。
やつに出会ったのはーーー
とある真夏日のこと。
俺は浜辺でトレーニングをするために、海パン一丁で近場の海に訪れた。
「きゃー!」
「あははは!」
家族やカップルたちがはしゃぐ中、俺はひたすら浜辺を走っていた。
「ーーーなにあのひと?」
「ずっと走ってるよね…?」
周囲の視線は多少気になるものの、トレーニングをやめてしまうほどのものではない。
俺はただひたすら走った。
走って汗をかいて、少しでも自分が自分でいられるようになんとか保ち続けていた。
ーーー空がオレンジ色になり始めると、遊びに来ていた人々は次々と帰り始めた。
そして空が真っ暗になってしまった頃には、もうすでに浜辺には俺しか残っていなかった。
「ハッ…ハッ…」
俺はまだ走り続けていた。
心の中にぽっかりとあいた穴を埋めるには、これくらいじゃ足りなかったのだ。
ーーー空は澄んでいて、そこにぽかんと月が浮かんでいる。
月の光だけを頼りに俺はとにかく走り続けた。
「ーーーすみませんそこの人っ!」
ふと突然、背後から声がしたため俺は立ち止まって振り返った。
するとそこには変な格好をした男が一人。
夏だというのに重たい白スーツをまとい、中には赤いシャツを着ている。
金髪の髪は爆発しているかのごとくボサボサで、満面の笑みを作りながらそいつは俺の方を見ていた。