今日こそ絶対に自殺します。
「ふふ」
男はふと笑みを浮かべると、すぐさま立ち上がって俺から少しばかり距離を置いた。
そして再び俺の方を向くと、横いっぱいに腕を広げた。
「それはーーー
這い上がろうとする勇気ですーーー」
「…っ!」
心臓に強烈なストレートパンチを食らったような感覚だった。
潮の匂いも、波の音も、一切聞こえてこない。
聞こえてくるのは頭の中の声のみ。
男が言った、たった一つの言葉ーーー
『這い上がろうとする勇気ですーーー』
「俺が思うに、あなたに必要なのはそれだけです。……勇気を持ってください。
そしてーーー」
男はニコリと笑った。
「俺の顔面にその『勇気』をぶち込んで下さい。大丈夫です、俺は強いから絶対に死にませんーーー俺を、信じてください。