今日こそ絶対に自殺します。





ーーーふと、寺内はある一点を見つめると、体を動かすのをやめた。



そしてものすごい形相で睨みつけ始めるーーー







「ーーーーーー人殺しめっ!!」


「人殺しぃぃぃぃーー!!!」




ーーーえ?




急に歓声の色が変わり、観客たちはたちまち誹謗中傷の言葉を叫び始めた。




私は寺内が睨みつける先に目を向けた。



すると、そこにはーーー










兄貴さん……




兄貴さんが、リングに向かって歩いてくる姿があったーーー







「お前なんか死んじまえーーーーー!!!」


「才能ないくせに戻ってくるなぁぁーー!!」




酷い………



次々と兄貴さんへ飛ばされる酷い言葉の数々に、私は耳を塞ぎたくなった。



だけど兄貴さんはーーー



ドシッ、ドシッ



一歩一歩を踏みしめるようにして、堂々とリングに向かっている。






ーーー兄貴さんがリングに上がると、向かい側の寺内はさらに兄貴さんを睨みつけた。



殺気がリング上を漂うーーー







「久しぶりに見たよ、お前の顔」


ふと、寺内が言った。


「俺のこと、まさか覚えているだろうな」



下を向いていた兄貴さんは寺内のことをまっすぐに見つめた。




「覚えてないわけがないさ。
ーーー久しぶりだな、寺内の弟」






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