今日こそ絶対に自殺します。
倒れた兄貴に、寺内は食らいつくようにしてパンチを入れていく。
「殺してやる!殺してやる!殺してやる!!」
審判が間に入っても、寺内は攻撃を一向にやめようとしない。
「……グホッ!……ガハッ!」
兄貴は苦しそうな表情で、身を縮ませている。
「ーーー死ねぇ!!!!!」
ふとトドメを刺すように寺内が拳を掲げた、まさにその時だったーーー
「ーーポン…」
「…!?」
突然兄貴は、自分のグローブを寺内の胸に優しく当てたのだった。
そして腫れ上がった顔を上げ、寺内の顔を涙を浮かべた目で見つめたーーー
「ーーー苦しかったな…辛い思いさせたな……
本当にすまなかった……!」
「……っ!」
寺内は攻撃をやめ、目を丸くして驚いていた。
兄貴はゆっくり体を起き上がらせると、寺内に優しく話し始めたーーー
「俺は本当に最低なやつだ……
お前の兄を奪い、お前の家族を壊し、それにも関わらずこうして生きて、またボクシングをやりたいと願っている……
とんだ最低野郎だ……!
ーーーだからな……」
兄貴はもう一度寺内の胸に拳を当てた。
「こんな情けない最低野郎のことなど、もうお前の胸の中に置いておくな……
俺に復讐をするために生きるなんて言うな……
ーーーお前は…お前のために生きろ…!!」
「……っ!!!」
寺内は兄貴を見つめたまま唖然としていた。
その目には少しだけ涙が浮かんでいる。
「生きろ!!お前は生きてくれ!!!
……お前の命までも…俺は奪いたくない!!」
ーーー頼む……
生きてくれ……!!