今日こそ絶対に自殺します。





倒れた兄貴に、寺内は食らいつくようにしてパンチを入れていく。




「殺してやる!殺してやる!殺してやる!!」



審判が間に入っても、寺内は攻撃を一向にやめようとしない。




「……グホッ!……ガハッ!」



兄貴は苦しそうな表情で、身を縮ませている。




「ーーー死ねぇ!!!!!」



ふとトドメを刺すように寺内が拳を掲げた、まさにその時だったーーー

















「ーーポン…」


「…!?」



突然兄貴は、自分のグローブを寺内の胸に優しく当てたのだった。



そして腫れ上がった顔を上げ、寺内の顔を涙を浮かべた目で見つめたーーー






「ーーー苦しかったな…辛い思いさせたな……
本当にすまなかった……!」




「……っ!」




寺内は攻撃をやめ、目を丸くして驚いていた。



兄貴はゆっくり体を起き上がらせると、寺内に優しく話し始めたーーー





「俺は本当に最低なやつだ……
お前の兄を奪い、お前の家族を壊し、それにも関わらずこうして生きて、またボクシングをやりたいと願っている……
とんだ最低野郎だ……!

ーーーだからな……」



兄貴はもう一度寺内の胸に拳を当てた。




「こんな情けない最低野郎のことなど、もうお前の胸の中に置いておくな……
俺に復讐をするために生きるなんて言うな……

ーーーお前は…お前のために生きろ…!!」





「……っ!!!」




寺内は兄貴を見つめたまま唖然としていた。


その目には少しだけ涙が浮かんでいる。





「生きろ!!お前は生きてくれ!!!
……お前の命までも…俺は奪いたくない!!」




ーーー頼む……



生きてくれ……!!









< 201 / 326 >

この作品をシェア

pagetop