今日こそ絶対に自殺します。






「ーーー知らないと言ってるじゃないですか」



「……っ!」



私よりも背が高い奴は、私の手を掴むとそっと自分の胸から離した。



「無駄に怒らない方がいいです。
早死にしますよ」



「………っ」



奴はそう言うと自分の崩れた制服を正して、静かに座って作業を再開した。



自分の周りに落ちたフィルムは、一切拾おうとしない。




「……ちっ」



てめぇが落としたものはてめぇで拾えってか。


ふざけんな。




私も勢いよく椅子に座ると、自分の作業を再開した。



フィルムなんて絶対に拾うもんか……










ーーーしばらく沈黙が続いた。



時々奴の顔を確認してみるけど、全く変化はない。


無表情でただ作業に没頭しているだけ。










ーーー知らないって…どういうこと?




私は頭の中で考えた。



知らないってことは、自分で笑っていることに気づけないってことなんじゃないか?



だったら気づかせてやればいいーーー






ーーーどうすれば?






「……っ!」



私はふと思いついた。



そして急いで席から立つと、棚に置いてあった自分のカメラを手に取った。



そしてーーー



「パシャッ!」



奴の横顔を、写真におさめた。




「……っ」


少し驚いた様子で、奴は私の方を見ている。




私はファインダーから目をはなすと、奴に言った。




「ーーー知らないんでしょ?自分の笑顔。

ーーーだったら私が、お前の笑った顔を写真に撮って見せてやる」



奴は少しだけ目を大きくした。


そしてすぐに作業に戻る。



「ーーー好きにしてください」







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