～1番愛した人～

「あれっ？！唯ちゃん久しぶり〜！おはよう！」




門をくぐると、体育館前にいた部活の顧問の中田が相変わらず真っ黒な顔で大きく手を振る。


私の学校は、門をくぐるとすぐ左手に体育館がある。


中田は、体育の先生でもあり、私が入っているテニス部の顧問でもある。


まあ、部活なんて行ってないのが現状。




『おー……』




とだけ、返事をしておき、昇降口に向かおうとした。




「あっ！唯ちゃん！今唯ちゃんのクラス体育やでそのままおいで！」




満面の笑みで手招きする中田を見ながら少し考え、体育館の方に向かう。


体育館に入ると、私のクラスの奴等が一生懸命マット運動をしている最中だった。




「あっ！唯おはよ〜！ちょっとこっち来て！」




同じ部員の紗南(サナ)が1番奥のマットから手招きする。


紗南がいるマットまで向かっている途中、翔太と未奈と挨拶を交わした。




『…で、どしたん？』




紗南がいるマットまで到着し、ゲラゲラと下品で気持ち悪い笑い声で笑っている紗南に聞く。




「あっ！あんな、さっきな、穂花と泰生がな、マットの上でSEXシーンの再現しとってな、どえらい怒られとんの！」




あ〜穂花と泰生ならやりそうやな…




穂花(ホノカ)は、私の学年でも目立つ方で、時々不良じみた事をして怒られている。


泰生(タイセイ)は、顔はイケメンハーフで、こいつも学年で目立つ方だ。





…………で、当の本人達は、体育館の隅で私と一緒に来た中田のお説教タイム。




あ〜かわいそ。あいつ説教なげぇし、あいつのお気に入りじゃねぇから散々ゆわれるやろな〜。




中田は、自分のお気に入りの子には全く怒らず、お気に入りではない子には凄く怒る教師失格なタイプだ。




ん〜しゃあなし今回は助けたるか。




泰生とは仲が良い私は、泰生が凄い嫌そうな顔をしていたので、体育館倉庫に向かう。




「唯、何か企んどるやろ？顔に書いてあるで？」


『何も企んでへんわ、アホか』




笑いながら紗南と言葉を交わし、体育館倉庫でお目当の物を見つけ出し、それを持って泰生等がいるとこから1番近いバスケットゴールを目指す。


その途中翔太を引っ張って行く。




ガコンッーー




マット運動に相応しくない音が聞こえ、中田も穂花も泰生もこちらを見る。


私が適当に投げたボールは、外枠に当たって跳ね返ってきた。