回帰螺旋
Opening story
ありふれた日常。
血の騒ぐことの無い、モチベーション。
小指に結ばれた古錆びた、赤い糸。
形ない鎖に繋がれた金色の伝説。
もう一人の”僕”が、対岸の向こうに揺らいで見えた。それと同時に掻き消されてゆく僕の存在意義。
右手に集うエゴイズムと、左手に集うプログラム。
延ばした線分の上で揺らめき立つもう一人の影。
いつしか彼は考えた。
この世界を、創り替えようと。
本当に大切な人を守る為に。
もう二度と大切な人を無くさないようにする為に。想い描いた世界で。
君の帰りをずっと、待っていよう。
そしていつかは、必ず二人であの丘の向こうへ行こう、と。
そしてこの世界を、今の世界に終焉を迎えさせるための決定打を彼は打った。
自分と対する銀色の伝説を作った。
しかしそれから何千年もの時が経っても、大切な人は還ってはこない。
そして時が流れてゆくうちに、変化は起きる。
彼の創った、銀色の伝説が、恋をした。
彼がいくら彼女を説得しようと、彼女の、銀色の伝説の心は揺るがなかった。
これではまた、自分と同じ道を辿ってしまう。
そう考えた彼は銀色の伝説に、もう一人、自分と同じ性質を持つ側近を置いた。
____子孫さえ残さなければ。
物語はそこで終焉を迎えるはずだった。
初めから伝説などいない。そうなる筈だった。
しかしそれは終わりではない。
物語の始まりだったのだ。
いくつもの想いが積み重なって出来た、螺旋状に渦巻く物語だった。