ワケあり彼女に愛のキスを
「すごいキツイ事ばっかり言うから、少し驚いてたの。……でも、ハッキリ言って目を覚まさせないと危ない感じだったし、気持ちに応える気がないならあれが正解なんだなっていうのも分かってたんだけどね」
「少しでも好意的な事言ったらまた勘違いされそうだったからな。それにああいうタイプは気持ちを拒否されたら逆上しそうだから、警察ちらつかせてそれを止める必要もあったし。
管理人が防犯カメラ設置してくれてて助かった」
そう言い、小さく息をついた優悟に舞衣が申し訳なさそうに笑う。
「さっきの人、助けて欲しいなって思った時に助けてくれたから、優悟の事、王子様に見えちゃったんだよ。
距離の縮め方が分からなくて、おかしな事になっちゃったのかもしれないけど……悪気があったとかじゃないと思う」
「叩かれといてよく言えるな。それに、なんでおまえが申し訳なさそうな顔してんだよ」
「だってなんか、気持ち分かんなくはないから居たたまれなくて」
気持ちが分からなくはないというのは、秀一を想う自分にストーカー女を重ねたからなのか。
そんな風に思い、ストーカー女に肩入れする舞衣に呆れた顔をした後、優悟がそっと手を伸ばす。
そして、舞衣の頬に指の背で優しく触れながら気を使うように「ここ、大丈夫か?」と聞いた。
赤く腫れているそこは熱を持っていて、見ているだけで痛々しい。
舞衣が怪我をしているところは、初めて会った時からもう何度か見てはいるが……それでも見慣れる事はなく、見る度に胸が痛んだ。
舞衣がまた、痛がったりせずに、いつも〝大丈夫〟だと笑うから余計に。
「部屋戻って冷やさないとだな。痛いだろ」
「んー、でもそこまでじゃないよ。秀ちゃんに殴られた時よりは全然」
そう言って笑った舞衣に優悟は呆れたような表情を向ける。そんな優悟を見上げながら……舞衣が「ねぇ」と話を切り出した。