ワケあり彼女に愛のキスを
「前、優悟、秀ちゃんと私の関係を客観的に見た方がいいって言ったでしょ?
あれから私、考えてたの」
『少し、現実見ろよ。ちゃんと自分と菊池の関係を客観的に見た方がいい。
そしたらおかしいって気付くだろ』
確か先週言った言葉が思い出され優悟が黙っていると、舞衣がそんな優悟を見上げて「それ、もう無理だよ」と目を細めた。
微笑んでいるのになぜかそうは見えないような……悲しんでいるのか微笑んでいるのか分からないような、そんな表情だった。
いつもはハッキリとした笑顔を浮かべる舞衣の表情が曇っているのは、初めて見た気がして優悟が内心驚く。
「今まで、秀ちゃんに何度も嘘つかれてきたの。騙されてきたの。
そういうの全部、秀ちゃんを好きだからって、一緒にいたからって理由だけで受け入れてきたのに……秀ちゃんを想う事を止めちゃったら、今まで溜まってた分のショックとかそういうの、全部一気に受け入れなくちゃになる」
静かに言うまいが、ぐっと唇を噛みしめ続ける。
「好きなんだから、こんなのなんでもないんだって……そうやって見ないふりして流してきた傷みたいなものを、一気に……」
目を伏せ「そんなの、きっと、耐えられない」と告げた舞衣が、少しそうしてからふっと口元に笑みを浮かべた。
その笑みはやはり、曇って見えた。
「秀ちゃんは……どんなひどい人でも、一番助けて欲しかった時、助けてくれた人だから。
他の人から見たこの恋がどんな形に見えても、私は秀ちゃんと一緒にいたい」
そう言った舞衣が、目を伏せたままぐっと歯を食いしばる。
「秀ちゃんと一緒じゃないと……不安で仕方ないの……。上手く、息もできない」