ワケあり彼女に愛のキスを


「どうしたんですか。らしくないですよ。北川さんだって真面目な付き合いなんてしてないでしょ」
「俺は、相手も真面目じゃないヤツ選んでるからな。……でも、城ノ内は違うだろ」
「あー……まぁ、軽いどころか重いですからね」
「真面目な付き合いが面倒くさいって言うなら、ちゃんとけじめつけるべきだし、これから真面目に付き合うなら向き合った方がいい」

そう言った後、「まぁ、俺がそう思うってだけの話だけど」と、押し付けるようにしてしまった意見をやんわりとぼやかす。

舞衣のためにも、秀一にはきちんとして欲しいと思う。けれど、秀一がきちんと真面目に向き合ったところで、とてもじゃないが、舞衣が幸せになれるとは思えなくて。
途中からは、秀一がきちんとけじめをつけて舞衣を振ってくれたら、そしたら自分が……そんな思いが先攻してしまっていた自分に、優悟が口の中で舌打ちする。

舞衣のためだけを想って言動に起こしたいのに、舞衣を想う気持ちがそれを邪魔してしゃしゃり出てきてしまい、それが嫌だった。

例え秀一が真面目に改心したところで舞衣は幸せにはなれないと優悟が思っていても、それと舞衣が感じる幸せとは別物だ。
周りにどう映ろうが、舞衣が幸せだと言うならそれが舞衣の幸せなのだから、他人である自分がどうこう言うべきじゃない。

そう思うからこそ、一週間前に舞衣を抱いた翌日の朝だって、もう口出しはしないと言ったのに。
ちっともそれを守れていない自分に気づいた優悟が、小さくため息を落とした。

「もしかして北川さん、今の女にはマジなんですか?」

ニヤニヤとしながら聞いていた秀一に片眉を上げると、秀一が続ける。

「いやー、だってすごい遊んでるって噂の北川さんがそんな意見言い出すなんて、そういう事でしょ。今の女にはマジになってて、だから俺が舞衣の事適当に扱ってるのが目に余ってっていう……うわー、北川さんがマジになった女とか見てみたいです」

「すげーいい女なんでしょ?」とコーヒーを飲みながら聞く秀一に、優悟も同じように缶を口に運び……それから「まぁな」と笑みを浮かべながら答えた。

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