ワケあり彼女に愛のキスを


「おまえは結局あの教室から抜け出せないんだよ。でも、俺がいれば大丈夫だって、身を持って分かってるだろ? 逆に言えば、俺がいないとおまえはひとりぼっちに逆戻りなんだよ。で、そうなったところで周りは誰も助けてくれない。
中学ん時みたいに」

呼吸を震わせ何も言えずにいる舞衣に、秀一が笑う。

「分かってるって。ちょっと間違っちゃっただけだよな? いいよ、今ならまだ許してやるから。おまえの事は、俺がずっと守ってってやるし」

手を伸ばした秀一が、「な?」と言いながら舞衣の髪に触れようとしたその指を、舞衣がパシッと振り払う。

指先に走った痛みに秀一が驚くと、舞衣が顔を上げていた。
身体を震わせながらもしっかりとした眼差しが秀一を捕える。

「私は……優悟を信じる。例えそれで捨てられてひとりになったとしても……秀ちゃんにしがみついてふたりでいるよりもいい。
優悟のくれるサヨナラなら……きっと優しいから」

舞衣の言葉に秀一は驚きから目を見開き……直後それを激しい怒りに変える。
舞衣は意思の籠った瞳で、キュッと口を引き結び……。ただ秀一を見ていた。







< 147 / 152 >

この作品をシェア

pagetop