ワケあり彼女に愛のキスを
「中学の頃、私周りとズレてるとかで友達がいなかったの。
ぶりっ子とかそういう事よく言われてて。一緒にいるとイライラするって……見てるだけでムカつくってハブかれちゃってて」
なんとなく分かる、とは言わずに黙って聞く。
それが素なんだとしても、そういう部分を嫌う人間は少なくないし、特に同性となればその度合いは高いだろうと予想がついた。
どうせ、舞衣の容姿に嫉妬して……という理由も加算されていたのだろう。女のやりそうな事だと優悟が思い、くだらないとため息をつく。
騒がしい教室の中で舞衣がしゅんと肩を落としひとりでいる姿が簡単に想像できてしまい、優悟が面白くなさそうに眉を潜める。
秀一に鍵を奪われた後、友達のところに泊まれと言った優悟に対し、舞衣は〝友達はいない〟と答えていたが……どうやら本当だったらしい。
「そんな時、秀ちゃんが友達になってやるって笑いかけてくれて……すごく嬉しかったの。
私、ひとりだったから。
そのうちに、エッチしないと友達止めるって言われて……だからすぐに頷いた。
秀ちゃんを失うなんて考えられなかったから」
「中学の時から秀ちゃんが私の世界のすべてなの」
そうハッキリと言う舞衣が、とてつもなく危うく見えて優悟が言葉を失う。
ストックホルム症候群という言葉が頭に浮かび、いや、それよりも依存症という言葉の方が正しいかと考える。
恋愛に依存する女が少なくない事は知っていたが、これはかなりの重度だ。
しかも自分にあんな仕打ちをする男を世界のすべてだと平気で言い放つ舞衣に、優悟が何も言えずにただ黙っていると。
体育座りをしたまま、舞衣がこちらに視線を向けた。