ワケあり彼女に愛のキスを


「優悟には分からないでしょ。どうせ、女の子日替わりとかなんでしょ?」
「……なんでそう決めつけるんだよ」
「だってこんなのがあればそう思うじゃない」

舞衣が指し示すのは、今舞衣自身が着ているTシャツとスウェットの下。
部屋に来た女がそれぞれ忘れていったモノだった。
わざとだったのか、その後少しして〝忘れちゃったから取りに行っていい? それに会いたいし〟と連絡がきたが都合がつかないと無視したままになっていたモノ。

一度関係を持った女とはもう二度と寝ないだとかそんなポリシーがあるわけではないが、深い関係になるのは面倒だった。
特に、父親がそれなりの会社の役員などと聞けば目の色を変える女を見てきただけに、表面上の関係以外は持ちたくなかったのだ。

「これ、Tシャツとスウェットのサイズが違うし、ブランドもタイプ別々だもん。
それぞれ別の女の子が忘れていったんでしょ?」
「……意外と鋭いな」
「女はそういうところ鋭いよ。だから優悟が騙せたと思った事も、案外相手の子は分かっちゃってるかもね」
「俺はバレてマズイ事なんかねーし。俺にどうこう言う前に、菊池にちゃんと言えよ。あんなナメた態度取られてそのままにしとくわけじゃねーだろ?
他の女んとこいって、終わったらまた相手してやるみたいな言い方されてんだから」

舞衣がぐっと押し黙り顔をしかめたのは分かったが、もとより言いたい事を我慢するような性格でもないため、そのまま続ける。


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