ワケあり彼女に愛のキスを
「ストーカー女なんて噂されてる私と仲がいいなんて思われたら、優悟の株落としちゃうもんね。優悟はただの親切心でよくしてくれてるだけなのに」
屈託のない笑みを浮かべながら言う舞衣に、苛立ちが襲うのはなぜだろう。
昨日は、ストーカー女だと噂されていると知った時、沈んだ表情を見せた癖に。
たった一晩でそれを受け入れ笑えるほどになった舞衣は。血が流れるほどの怪我をいつもの事だと笑う舞衣は。
一体どれだけの痛みやキズを抱えて乗り越えてきたのだろうと、それを考えると居たたまれない気持ちになる。
――こいつは。
健気を通り越して、バカだ。
「おまえに考えてもらわないとダメなほど、俺の株は低い場所にねーから安心しろ」
「そう? でも、先輩が確かに見た目は特上だけど冷たい男はちょっとって言ってたよ」
「んなもん、言いたいように言わせとけ。……で、おまえこれからどうすんの?」
いつまでも無駄話をしていても仕方ないと、優悟が切り出した話題に、舞衣は困り顔で笑う。
「んー、本当はこれから部屋行こうと思ってたんだけど……。
ほら、朝あんな事になっちゃったせいで大家さんが危ないからよしなさいって言ってきて。
住むところないなら、隣の部屋が後一ヶ月で空くからそこに入ればいいって言ってくれてるの。
事情も事情だし、敷礼はなしでいいからって」
「隣の部屋かよ」と苦笑いを浮かべた優悟に、舞衣も同じように笑みをしかめる。
「私……秀ちゃんが好きだけど、二番目とかキープでもいいって本気で思ってるわけじゃないから。ちゃんと付き合いたいから……。
さすがに、他の女の人と暮らしてる隣の部屋でっていうのは……無理だなぁって」