ワケあり彼女に愛のキスを
「あの……えっと、毒とか入ってる?」
「あ?」
「だって、私がここにいるだけで優悟は迷惑なのに朝ごはんまで用意してくれるなんて……。
なんか裏があるのかなって」
「別におまえの事抹殺しようだなんて考えてねーから安心して食え」
「……うん」
人を疑う事を知らないとばかり思っていたのに、と優悟がおかしく思う。
舞衣ならきっと、誰が用意した食事でも、それが例え自分に恨みのある人間が作ったモノだとしても。
もっと言えば、常識では考えられないような魔法で出された食事でも、何の疑いもなく喜んで食べると思っていたのに。
未だ戸惑い納得しきれていない顔でパンを頬張る舞衣に、優悟もどこか納得がいかず違和感が残っていた。
そういえば、コンビニで無理やりパンを買わせた時も、昨日の朝食を分け与えた時も、申し訳なさそうにというか、戸惑って表情を崩していたっけと思い出す。
もしかして。
無条件に優しくされると戸惑うのか……?と、なんとなく舞衣を眺めながらパンを胃に詰め込んでいると、不意に舞衣が顔をしかめた。
その手元には、紙コップ。
ホットコーヒーの熱が紙を通しても熱かったようだった。
「うち、カップひとつしかねーから」
悪びれずそう言った優悟に、舞衣が首を傾げる。
南向きの部屋には、大きな窓から朝日が間接的に入り込み照らしていた。
網戸からは涼しいながらも湿気を含んだ風が入り込みレースのカーテンを揺らす。