ワケあり彼女に愛のキスを
「女の子よく連れ込むのに?」
「よく連れ込んでるわけじゃねーよ。それに、連れ込んでも泊まらせる事はほとんどねーし、泊まらせても朝コーヒー入れてやったりしねーし」
「そうなの?」
「朝飯食べる前に出て行かせるから。ふたり分作るのも嫌だし、キッチンいじられんのも好きじゃねーんだよ。
第一、朝から他人と話すの面倒くせぇ」
「なんか……ごめんね」
今まさにその面倒くせぇ状態だったため、さすがに優悟もしまったと思う。
言った事は全部本音だが、別に舞衣を責めようとした意図があったわけではない。
それに、本当に面倒だったらわざわざコーヒーを入れてやったりパンを焼いてやったりしていない。
本来なら面倒だと思う事が、今日に限ってはそう感じなかったのはただの気まぐれなのかどうなのか……という事はひとまず置いておいて。
「それより、おまえの荷物、まだ菊池んとこに残ってんじゃねーの?
トランクひとつしかないって事ねーだろ」
「ああ、うん。あと少しあるくらいだけど」
「それ、取ってくれば。必要なもんもあるだろうし。散らかさなければうちに置いといていいから。
どうせ、そんな量あるわけじゃねーんだろ?」
「うん。あと、服が半分くらいと買い置きの化粧品とかと……タオルとかくらいかな」
「……随分少ねーな」
眉を潜めた優悟に対して、舞衣は「無駄遣いするなって、秀ちゃんが言うから」と笑う。
「どうせ、おまえから巻き上げた金で菊池は無駄遣いしてるのにな」と優悟がため息をついてから、再び眉をしかめた。