ワケあり彼女に愛のキスを
家事全部をすると言っているのだから、そうさせておけばいい。
そうすれば助かるし、部屋に置いてやってるのだから、それくらいの見返りがあっても悪くはないハズだ。
なのに、なぜ。
すんなりそれを受け入れられない自分がいるのだろう。
秀一と自分は違うと、言いたくなるのだろう。
何もしなくたって、そのままで十分必要だと……そんな、らしくない事を言ってやりたくなるのだろう。
答えはきっと、舞衣があまりに不幸体質でその上健気すぎて、今まで見た中でぶっちぎりで可哀想な状態にあるのと、それと……。
自分の気持ちが動いたせいだろう。
正直、認めるのは癪だった。
なんで俺がこんな不幸体質な可哀想な女に。よりによって他の男に夢中になっているような女とかありえねー。
そんな不満が、ここ最近は常に頭の中に渦巻いている。
書庫室で舞衣に手を初めて差し伸べた時も。ここにしばらくいていいと告げた時も。無邪気に向けられる笑顔を、うっかり可愛いと思ってしまった時も。
舞衣と出逢ってからずっと、頭の中は、そんな不満ばかりだった。
でも逆を返せば、そういう事で。
他の男に夢中になっているのが気に入らないだとか、無頓着すぎて放っておけないだとか理由はいくつかあるけれど、元を正せば見えてくる気持ちはひとつだった。
優悟はきちんとした恋愛をしてこなかっただけで、決してその辺に鈍感なわけではない。
そして……それを隠すだとか、そんな臆病な一面も、奥ゆかしさももちろん持ち合わせてはいない。