ワケあり彼女に愛のキスを
「席、他にも空いてるのにこんなところに座ってていいんですか?」
「受付嬢ふたりも見つけちゃったら見逃せないでしょ。可愛い子前に食べた方がおいしいしね」
「みんなに言ってるくせに」と言いながらもまんざらでもない顔をして笑うのは、舞衣の二期先輩である木村。
顔立ちははっきりとしていて、可愛いというよりは綺麗と表現した方が正しい。
木村を見ながら、プライド高そう、キツそうな女、と思っている優悟の隣に座るのは、優悟の三期先輩の内間。
見た目は普通だが、性格のとっつきやすさや明るさ、そして積極性から社内社外にそれなりの人気があるのは事実だった。
「舞衣ちゃん、だよね? 初めまして。融資推進部の内間です」
「あ、初めまして。城ノ内です」
舞衣ちゃん、と初対面にも関わらず名前で呼ばれた事には抵抗はないのか。
舞衣はにこりと笑顔を作って内間と挨拶を交わす。
それから、優悟に視線を移し「城ノ内です」と微笑んだ。
いつも割とどんな時でも笑っている舞衣。だから、舞衣の笑顔なんて出逢って一ヶ月足らずでも何度となく見てきた。
それなのに初めて見る、舞衣の余所行きの笑顔に、優悟が違和感を感じながら「どうも」とだけ答える。
舞衣の隣で「受付の木村です」と甘えるような声色で自己紹介をする木村にも同じように返し、軽く会釈をすると、それを見ていた内間が苦笑いを浮かべた。
「それだけか? うちの自慢の受付嬢ふたりも目の前にしてもっと何かあるだろ。
綺麗だとか可愛いだとか清楚だとか、俺なんか放っておいたって褒め言葉がポロポロ出てくるけどな」