ワケあり彼女に愛のキスを
「はぁ」と興味なさそうに答える優悟を見ていた木村が「北川さんからしたら私たちレベルなんてどうって事ないですよね」とそんな事ないと言わせたいがのための罠のような言葉をかける。
しかも、〝私たちレベル〟という事は、自分がある程度高いレベルにいる事を自覚しての発言。
優悟からしてみれば苦手というか、嫌いなタイプの女だった。
けれど、だからといってそうですねと返すわけにもいかないため、面倒に思いながらも「そんな事ないですけど」と一応のフォローを入れると、罠を張った木村が満足そうに笑う。
「本当ですか? 嘘だとしても嬉しいです」
「そうだよ。確かに北川はモテるけど、木村さんも舞衣ちゃんもかなりレベル高いし。
木村さんはお姉さま系で甘えさせてくれそうだし、舞衣ちゃんは甘えさせてあげたいって感じで系統が違うのがまたいいよね。
舞衣ちゃん、よく言われない? 小動物系っていうか癒し系だって」
一度の会話に三度も〝舞衣ちゃん〟と呼んだ内間を、優悟がチラリと横目で見てから舞衣に視線を向ける。
舞衣は内間のあからさまな好意に気付くわけでもなく、笑顔で「いえ」と答えていた。
やはり、余所行きの笑顔で。
そんな舞衣を見て、隣に座っている木村が笑う。
「この子、あざといところあるから。守ってあげたいー、みたいに感じる男性職員が多いみたいですけどね。そういうの、男性側からしたら可愛いとか癒されるとかなるんでしょうけど、同性から見たらバレバレですよ」
舞衣を目の前にしての棘のある言葉に、調子のいい内間でさえ一瞬言葉を失い、テーブルにしーんとした空気が降りかかる。
あくまでも笑顔での悪口に女って怖えぇ……と優悟と内間が思いながら向ける視線の先で、舞衣が申し訳なさそうに「すみません」と微笑むも。
それを見た木村は、謝られたのにも関わらず気持ちが収まらないようだった。