ワケあり彼女に愛のキスを
受付の仕事内容は、言葉通り、取引先などを含む、外部の人間の窓口。それと、アポなし営業や厄介な訪問者の追い出しと電話が主だ。
他には、会議室や役員フロアでの顧客対応に、お茶出しや片付け。
それを五人で分担して行っている。
舞衣は、通常の受付業務や電話対応など基本的な仕事は慣れたモノだが、アポなし営業や追い出しは苦手だった。
アポなし営業は、かなりしつこく頭を下げる姿を見せられると通したくなってしまうし、土下座なんてされた日にはほとほと困り果ててしまう。
土下座事件が午前中にあれば、自分にどれだけ頭を下げてもらっても、門戸を開けるわけにはいかない歯がゆさというか罪悪感というか、そんな感情が一日中胸を覆い、ふとした瞬間に笑顔の隅から顔を出そうとする。
厄介な訪問者は言葉通り度を越して面倒くさい事が多いため、相手をしているだけで気がそがれてしまう。
例えば一度融資を断った企業だとか、企業ではなく、個人だとか。
そういった訳ありの人たちが、どうしても資金が必要なんだとすがりついて頼んできてもそれを笑顔で追い返さなくてはならないのだから大変だ。