ワケあり彼女に愛のキスを
「たまたま……にしちゃ、うちのゴミだけって出来すぎてる気がするけどな」
「でも、ゴミ袋に穴開けたところで何がしたかったんだろ。ただの嫌がらせ? だけどゴミ出した後じゃ荒らしたって私たちが気づかない可能性だって高いし、気づかなければ嫌がらせにならないよね。
そんなのゴミ収集の人たちが困るだけなのに」
「俺も考えてたけど……ゴムでも探してたのかもな」
ゴム?と首を傾げた舞衣が、優悟の指す物を理解し、眉を寄せた。
優悟の言った〝ゴム〟は、輪ゴムだとかモノをくくる類の伸びのいい文房具じゃない。
それを御守り代わりにお財布に入れておくといいなんていう噂の出所も理由も未だに謎だが、高校の夏休み、うっかりお財布を落として交番に行った時、中身の確認で小銭やらポイントカードと一緒にそれを並べられた時の気まずさはまだ舞衣の記憶に鮮明だった。
そんな事を思い出し、苦笑いをもらした舞衣が優悟を見上げる。
「なら、やっぱり優悟の方の問題じゃない。優悟と私が身体の関係じゃないかどうか調べてるって事でしょ?」
「そうとも限らないだろ。俺かおまえのストーカーだって決めつけて考えたらそれぐらいしか思い当らなかっただけで、他にも可能性はあるし。でも……あんまいい気分じゃねーな。とりあえず、管理人に言っておくか」
「そうだね……。でも、一回やられたくらいじゃ、すぐ動いてくれないかも……」
舞衣はそう呟きながらうーんと唸り。それから「待ち伏せてみる?」と優悟を見上げた。
「万が一だけど、続いても嫌だし、もし本当に誰かが意図的にやってた場合、エスカレートしないうちにハッキリさせた方がいいと思う」
そうキッパリと言い「だから、次のゴミの日、私が見張るよ」とやる気を瞳に漲らせる舞衣に、優悟も顔をしかめた後、「そうだな」と頷いたのだった。