ワケあり彼女に愛のキスを


うっとりとした表情で見つめてくる女に、優悟がため息を落としてから「何をどう勘違いして、どこまで都合よく解釈したんだか知らないけど」と面倒くさそうなトーンで切り出した。

「俺があの時言ったのは、どうでもいいっていう内容の言葉だけだ。確かに何か言ってんのは知ってたけどよく聞こえてなかったし、聞き返すのも面倒だと思って適当に返事しただけで、俺は、嬉しがられるような事は一言も言ってない」

「え……」とわずかに戸惑いの声をもらしながらも、女の瞳はまだうっとりとしたままで、今の優悟の話も全部は通じていないようだった。
そんな様子を見ながら優悟が続ける。

「なんで聞き返すのも面倒だったか分かるか? おまえが俺にとって会話する価値もなかったからだよ。だから、何言ってんのか分かんなかったけど適当にしか答えなかった。
おまえが何言ってようが、何に悩んでようが、これからどうなろうが、ハッキリ言ってどうでもよかったから」

ズケズケと告げられる言葉に、さすがに女の表情がうっとりと戸惑いの割合を逆転させる。動揺からか瞳を揺らす女を、優悟が睨むようにして見た。

「もっと言えば、今まではどうでもよかった。でも……今は正直、殴りたいと思うくらいには嫌ってる」
「え、なんで……?」
「俺とこいつの関係性を確認もしないで急に殴ってくるようなヤツ、嫌にならない方がおかしいだろ」

顔を嫌悪感から歪める優悟に、女が視線を彷徨わせ舞衣を見る。
そしてその頬が赤く腫れあがっているのを確認してから、また視線を不安定に泳がせ「だって……」と弱々しく口にした。


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