【完】サックスパートの日常
本番直前ーナミちゃん
体育館に着くと、
「やばい。本番が近づいてきてる。あーどうしよう。お腹痛いし失敗したらやばい。ソロとか私はどうしたらいいの。なんで結菜先輩私にソロ譲ってくれちゃったの…どうすればいいの。絶対間違える。ダメだこれ誰か助けて…」
なにやらブツブツと言ってるナミちゃんが。
そう、私はソロが複数あったのでひとつをナミちゃんに譲ったのだった。
「ナミちゃん、おはよ。」
「ゆ、結菜先輩…どうしましょう。私ソロ失敗する気しかしないです。」
ナミちゃんはすごく、弱気だ。
自分のことになると上手いのに自信をなくしてしまうもったいない子。
「だからなに?」
大丈夫、ナミちゃんならできるよ!
そんな言葉はかけない。そんな言葉をもらってもナミちゃんも意味がないと思うから。
「ソロはね確かに重要だよ。その人しかメロディーがないんだから。間違えたらバレるし、少しでもズレたらみんなに迷惑かける。」
ナミちゃんはコクコクと頷く。
でもね、ナミちゃん。
「ソロは自由に吹くものなんだよ。楽しんで思いっきり。自分が主役なんだからさ。
むしろ、みんなに私上手いでしょ?って見せつける気で行かなきゃ。遠慮したら負け。」
それに、ソロ間違える気しかしないだなんて、裏で支えてくれる子やソロ吹きたいのに吹けないほかの二年生に失礼でしょ?
そう付け足すとナミちゃんは少し緊張がほぐれたようだった。
「そうですね、私、ソロ頑張ります。てか、二年生でソロあるのってサックスパートの二年だけですよね。
ほかのパートに自慢するように吹いてやります。」
強気になったのはいいことだ。
でも、
「感謝することも大切だからね…」
まぁ、それでナミちゃんが頑張れるならいいか。
クスリと笑って私はそういった。