初夏…君を想う季節
自分の部屋へ戻り、少し気を落ち着かせてから先生の番号へ電話を入れた。

―プルル プルル プル

「はい、もしもし。」

「先生?私です。」

「あぁ、電話くれたんだね。ありがとう。
あとで登録しておくよ。」

「今日はありがとうございました。」

「いえいえ、こちらこそ。」

「あの、先生。私、もっと先生を知りたいです。
もっと私のことも知ってもらいたい。」

「時間をくれればいくらだって話すよ。
もっと素のキミもたくさん知りたいからね。」

「はい、なんだか夢みたいです。」

「僕も現実だなんて信じられないよ。
あ、来月美桜の誕生日だったよね?どこか行きたいところは?」

「え!?私先生に誕生日なんて言ったことありましたか?」

「あ…すまない。職員用データベースにログインしたんだ。
勝手なことをしてごめん。職権乱用だな。」

もうすぐで消えてしまうのではないかというほどの弱々しい声だ。

「あ、いえ自分で言ったのかと思ってビックリしただけです。
それに私先生の誕生日知りませんし…。」

「驚かせて申し訳ない。誕生日は11月19日、さそり座のA型だ。
ほかに何か聞きたいことは?」

「そうですね…じゃぁ、好きな食べ物は?苦手な食べ物は?
趣味は何かありますか?いつから私のことを見て下さっていたんでしょう?
何をしている時間が一番リラックスできますか?
先生いつもご自分のことを僕と仰いますが、本当は俺って言うんですか?」

「ちょっと待って、まって。質問が多いよ。
まだ増えそうな勢いだったよ?」

「あ、すみません。ゆっくり知っていけばいいですよね。
こういうのに慣れていなくて…申し訳ありません。」
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