初夏…君を想う季節
そんな冷めた私の知的好奇心を
一瞬で奪い去っていったのが雪だった。

これまで人と話していてこんなに楽しいと思ったことはなかった。


古典文学から言葉を持ってこようが
偉人が残したたくさんの名言から言葉を借りてこようが
何を話しているかわからないなんて言われる訳はなかったし、
可愛げなんて塵ほどにもない私に向かって
素敵だとまで言ってくれる、そんな人だった。

ずっと背中を追い続けていて
気がつけば考えない時間(とき)など無い程になっていた。

背中しか見れず、このまま終わっていくのだと
勝手に思い込んでいた。
それを覆してきたのもまた雪だったのだ。

どれほど雪の言葉に救われ、
どれほど雪の言葉に安堵したか
本人は分かってなどいないだろう。

それでも、走り出した。

(追いつきたい、追い越したい…
そうやって追ってばかりいた背中は
もう見ることはない。

これからは隣にたてる。

この充足感が雪さん、貴方には分かりますか?

どれほどの幸福感に包まれているか…。

貴方を好きになって本当に良かった。)
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