初夏…君を想う季節
「今日は、三国時代前期をやります。・・・・・・・・・・・・。」
淡々と授業は進んでいく。

(はぁ…。優しい声。)

落ち着くその声に耳を傾ける。

美桜が徐々に雪に惹かれだしたのは3回の頃だった。
どのゼミに入るか考えていた時、たまたま話をする機会があり
ぜひ僕のゼミにと誘われたことがきっかけだった。

ゼミに誘われた理由は、
“煬帝(ようだい)と始皇帝(しこうてい)はどちらの方が暴君だったか”
という話を気づくと2時間以上も話し込んでいたから。

「君の話は興味深すぎる。たった1日や2日ではこの問の答えは出そうもない。
どうだろう、是非僕のゼミへ来てもらえないだろうか。
もちろん、君が良ければの話だ。返事はまた聞かせて欲しい。」

「いえ、もう決めました。二年間お世話になります。宜しくお願いします。」

そう言うと先生はクスッと笑い
「こちらこそ。毎日が楽しくなりそうだ。」
と言ってくれた。

気がつけばどんどん先生の魅力に惹かれ、好きになるのにはそう時間はかからなかった。
先生の言葉選びや表現、センスにはいつも驚かされた。

でも私はこの気持ちを伝えようとは思わなかった。
最近、頻繁にニュースで教授のわいせつ行為がバレて捕まったとか
耳にも入れたくないようなニュースばかりが飛び込んできて余計に言う気が起きなかった。
ただそっと見つめられればそれだけで良かった。

何より、時々暇を見つけては
何かテーマを決めて
二人で何時間も談議にふけこむことが出来たから
わざわざこの関係を壊してまで
言う必要などないと思っていた。
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