初夏…君を想う季節
車は十分ほど走ったところで止まった。

「さぁ、着いたよ。僕のおすすめの店だ。」

そういってとてもスマートに助手席のドアを開け、エスコートしてくれた。

「いらっしゃいませ。お二人様ですね?
窓際のお席へどうぞ。」

店内はシンプルだけど、可愛らしいレトロな感じの作りだった。
案内された席に着くと、先生がメニューをサッと広げてくれる。

「さ、どれにする?好きなものを頼んで。」

「えっと…じゃぁ、カルボナーラで。」

「もう決まったのか!?女性というのはもっと悩んでから決めるものだと思っていたが…。」

「私こういうの決めるの早いんです。人を待たせるのも得意ではありませんし。」

「そうか。君は本当に…あ、いやなんでもない。
すみません、カルボナーラを二つ。」

「食後のコーヒーか紅茶はどちらにされますか?」

「紅茶で。」二人の声が重なる。

「かしこまりました。少々お待ちくださいませ。」

前を向くと、目が合ってしまい
どちらからともなく笑ってしまった。

「あんなに綺麗にハモるなんて思わなかったよ。ははっ。」

「店員さんに微笑まれてしまいました…。」

「すまない、僕のようなおじさんと恋人に間違われたなんて
シャレにもならないな。ほんとにごめん。」

「いいえ、とんでもないです。こちらこそすみません。
こんな小娘が相手だなんて…。」
< 9 / 32 >

この作品をシェア

pagetop