いつだって僕らは
「遠くの人、ねぇ・・・」

藤谷はペン回しをし始める。空を眺めるのに飽きたようだ。学生は暇になるとペン回しをする。細かく動くその指は、日頃鍛えたわけでもなく、技を習ったわけでもない。ただ暇な時にペンをいじるという事で学生はペン回しを上達させていく。

「あたしは、ペンの良さが分からないけどね」

ペン回しに夢中な藤谷を、少し馬鹿にするようにあたしは言った。
あたしにはあんな風にくるくるとペンを回したり、指を細かく動かす事はできない。

「ペンの良さが分からないのか?字を書けたり、あとは・・・絵書いたり、それに・・・まあ、書くことができるんだぜ」

「書くことしかできないじゃん」

藤谷は馬鹿だった。
まあ、ペンの一番良い所は「書ける」という所だけど・・・今、藤谷の手ではペンが回っているのだから「回せる」とでも言えば良かったのに。

「あのなぁ、書けるって素晴らしいんだぞ?俺は、このペンと、紙で友達と繋がってるんだからな」

「繋がってる?」

藤谷は、ペンを回している指をピタリと止めて、ノートの新しいページを開いた。
やっぱりあたしたちは授業を聞いていない。
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