瞬間と君

帰ろう

美海side★


「その後、僕は何年か放浪していて今の御主人であるあなたに出会いました」


そんな悲しい過去が空にあっただなんて想像もしていなかった


だって今日会った時、あんなに笑顔だったんだから


私は彼になんと声をかけたらいいのか分からなかった


こんな過去を聞いた後に
『悲しい過去があったんだね』
なんてただの同情の相槌は打てなかった


「暗い話だったのでなんだか疲れてしまいましたね、もう日も暮れてきましたし遅くならないうちに帰りましょうか」


そう言って立ち上がり当たり前のように私の手を引き、立たせてくれる空


『うん、帰ろう』


私はやっぱりそれしか言えなかった




< 23 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop