サンドリヨンに憧れて
その後も買い物が続き結局両手いっぱいの紙袋を持ち帰ることになった。

帰り道に夕食も済ませ彼の家に戻ってきた。

リビングで片付けを終わらせ寝室へ行き帰る準備をしようとした時、

彼に腕を掴まれて止められた。

「孝男さん・・?」

「香澄・・やっぱり・・帰るんか?」

「はい・・だって明日から仕事やし・・」

「ここからだって・・通えるやろ?」

「でも・・それはあかん・・決めたことやし」

「・・わかった・・送っていくから・・置いておけるものは置いてええから」

「はい・・」

キャリーバックを開けて持ってきた荷物をまとめている間、彼はパソコンで何かを

していた。

「できました」

「ほんなら行こうか・・」

本当は寂しい気持ちもあったがまた明日から会えることを楽しみにして

彼の寝室のドアを閉めた。

車に乗ってマンションの下に着いた時、エントランスに誰かの気配を感じたが

気のせいだと思いそのまま家まで上がっていった。

「孝男さん・・上がっていく?」

「・・今日はここで帰る・・上がったら香澄から離れられへんようになる」

そんな言葉今まで誰にも言われたことが無かった。

彼は私の心臓をどれだけドキドキさせる気かと心で思っていた。

「それじゃ・・明日・・会社で・・」

「おやすみ・・」

そっと唇に触れた後、やさしく微笑んで帰って行った。
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