サンドリヨンに憧れて
就業時間までの間、週末のことで課長が私の同期に突っ込まれていた。

「課長、横山さんとはどうなんですか?」

「え?そんなに聞きたいか?」

「そりゃ・・営業の王子がですから」

「その王子って・・俺もそんな年ちゃうぞ・・」

「で、どうなんですか?」

「どうなんですかって・・俺ら・・結婚するよ」

その一言が回りを黙らせてしまった。

私もその言葉を聞いて、目を大きく見開いて彼の姿を見ていた。

暫くの沈黙の後、驚きの声と同時に私の隣にいた後輩が私の腕を握り

指輪を探していた。

「香澄さん!指輪は?!」

「え!指輪?」

「何でしてこないんですかー!あ~仕事ではできませんよね・・高価すぎて」

勝手に喋っている後輩に言い返すこともできず、困っていると

彼が私の近くにやってきた。

「彼女を苛めんとってくれ・・な・香澄」

「あ・・あの・・・」

「あ、時間やな・・仕事始めようか・・・さぁ今日も頼むぞ」

ちょっと!指輪ってもらってないし・・

こんな公開プロポーズまがいなことを・・・

私は何も言えず周りが動き始めているのにぼーっと立っていた。

「香澄ーほら、ぼさっとせんと」

「あ・・うん・・」

今日一日、ちゃんと仕事ができるのか不安だけが残った。
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