サンドリヨンに憧れて
仕事中に誰が情報を流したのか、私は一日中他の課の人にジロジロと見られ、

廊下ですれ違う人によっては睨まれたりと、それだけで疲れがたまってくる。

昼休み・・彼に呼び出され、会議室へとやってきた。

「香澄・・今朝はびっくりしたか?」

「当たり前やんか!あれじゃ公開プロポーズみたいやし、女子には睨まれるし・・
踏んだり蹴ったりやわ・・」

「でも俺はいつもお前に言ってたつもりやけど?」

「・・・は?」

さわやかな笑顔の彼に向かって、私は呆れた顔で言ってしまった。

「もう・・一体何考えてあんなこと言ったん?」

「俺の香澄に手出すな・・ってことや」

その一言で山田に対するとどめの一撃で行動を起こしたのかもしれないと思った。

「もしかして・・ゆう・・」

その言葉を言おうとした瞬間、私の唇を強引に塞いだ。

誰かに見られたら困ると思い、慌てて離れた。

「孝男さん・・あかん・って・・」

「香澄から・・その名前は聞きたない」

彼の腕の中にいる私はその言葉に驚き、瞬きをしていた。

「え?・・それって・・」

「俺の嫉妬・・・」

顔を見られるのが嫌だったのか私を抱きしめて胸の中に納めてしまった。

その行動に思わずくすっと笑ってしまった。

「あかんな・・香澄のことになったら・・」

ため息と一緒に頭の上から声がした。

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