サンドリヨンに憧れて
「庄司の親父ってな俺の親父の同級生やねん・・たまに俺もゴルフを一緒にしたり
飲んだりしてるから気兼ねなく付き合ってる人やねん」

「え?ほんなら・・・」

「だから・・親父さんに俺から一言付け加えておいた」

「何を?」

「庄司には結婚を考えてる子がおるってことと、俺が太鼓判押すぐらいのいい女性
やってことを伝えた」

「え!ほんならご両親は?」

「あんまり結婚のこと言わんからお見合いを吹っ掛けただけで、彼女がおったら
早く結婚させたかったって。だから・・・今プロポーズしてるんとちゃうか?」

「うそー!」

「声でかい・・」

「あ・・ごめん・・・藍子の口ぶりだともう別れるって思ってたから・・」

「あ~だからか・・この世の終わりかっていうぐらい黒田さんの顔・・酷かったな」

「でもよかった・・これで藍子が・・・」

胸の奥からぐっとこみ上げてくるものがあった。

「香澄が泣きそうになってどうするねん・・」

「だって・・・藍子が・・」

「もう・・しゃあないな・・」

優しく胸元の顔を埋めさせてくれて優しく頭を撫でられていた。

「ごめん・・孝男さん」

「ええよ・・俺は大歓迎やから・・」

会議室のある階の喫煙ルームは会議が無い限り誰も来ない。

だからこうしていても誰にも見つからない・・・

「でもこれ以上泣いたら・・襲うぞ」

「え!あかん・・」

「香澄・・・その顔で戻ったら・・あかん・・」

そのまま唇にふれ・・・私は彼のシャツをぎゅっと握った。
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