サンドリヨンに憧れて
「横山さん、これ出張のお土産です」

さっきの後輩が満面の笑みで机にお菓子を置いた。

「あっ・・ありがとう」

咄嗟の返答がおかしかったが、後輩は何も言わず私の後ろを通っていった。

はぁーっとため息をつき残りの時間は周りのことは見ずに仕事をこなしていった。

定時ちょうどに立ち上がりロッカールームへと小走りで向かった。

後を追いかけるように藍子がやってきて、何かおかしいと言われたが

さっきの出来事は言わずに、時間に焦ってるだけと言ってさっさと支度をした。

「香澄、あんな・・」

「ん?庄司のこと?」

「うん・・そのこともあるねんけど・・」

「ここじゃ誰が聞いてるかわからんから・・今晩でも連絡してくれる?」

と小さな声で藍子に言った。

「わかった・・。」

「ほんならお先!また明日!」

藍子の肩をポンと叩いて先に出て行った。

エレベーターを待っていると、彼と庄司と山田が歩いてきた。

「お疲れ・・」

「お疲れさまです・・」

優大も課長と普通に話をした姿をみて心の中でほっとしていた。

「俺・・藍子待ってるから・・先行ってくれ」

降りてきたエレベーターに私達3人が乗って扉を閉めた。

3人しか乗っていなかったことで優大が彼に話かけた。

「課長、女子の噂・・気を付けてください。横山・・言われっぱなしです」

さっきのことを言わないように優大を睨んでだ。

「香澄、何か知ってるんか?」

「え?知らないです・・廊下では睨まれましたけど・・」

「そうか・・わかった。気を付ける。山田・・ありがとうな」

「大事な同期ですから・・」

1階について扉が開くと、優大はそのまま黙って歩いて行ってしまった。

その姿に私の心には何かしこりのようなものが残った。
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