サンドリヨンに憧れて
「香澄・・行くぞ」

「はい・・」

あの話を聞いていなければ今はとっても楽しかったかもしれない。

お下がり・・・その言葉が気になって気持ちは複雑のままだった。

そんな気持ちを持ちながら繁華街に向かって歩いていくと、

某有名なブランドのアクセサリーショップの前で課長が足を止めた。

黙って入って行こうとしたので彼の腕をつかんだ。

「孝男さん?ここって・・」

「香澄の指輪を取りに来た」

「取りに?え?」

「注文しててん・・だから・・受け取りにきた」

私の腰元をもってエスコートするように中へ入って行った。

「加藤ですが・・・」

「お待ちしておりました・・どうぞこちらに・・」

案内されて出来上がったリングが目の前に出てきた。

「こんな高価なもの・・・」

「大丈夫や・・3か月分っていうやろ?」

どう見ても3か月分には見えない・・・下手したら半年はいきそう・・

サイズ確認をしてはめて帰るか確認されたが、

さっきの会話を聞いたせいか心底喜ぶことができなくなってしまっていた。

結局ケースに入れて持って帰ることにした。

「ほんなら俺が持っとくから・・」

「え?あ・・うん・・」

受け取りが終わり今度は駅前のホテルにやってきた。

「今夜は・・ここに行くぞ・・・」

展望レストランで食事をして、その後そこでワインを飲んでいると

彼が胸元からさっきのケースを取り出した。

「香澄・・・これ・・」

目の前のケースを触る前に泣きそうになった。
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