サンドリヨンに憧れて
優大との今日の出来事が心の中に残っていたが黙っていたほうがいい

言わないほうが・・・優大の為にもいいかも・・

「ほんなら、行こうか」

「あ・・うん・・」

ホテルを出て駅に向かっていると、彼が黙って私の手をつないだ。

「ええの・・会社の近くやのに」

「ええよ。もう結婚するって言うたやろ?」

「あ・・そうやね・・」

「それに見られて拙いことでもあるんか?」

「ないよ、でも孝男さんがまた何か言われたら・・・」

「大丈夫や・・・」

堂々としている彼の姿にやっぱり今日のことを黙っていたことが

後でバレてしまったら・・・やっぱり言ってみようかな・・・

「孝男さん・・あんな・・」

「ん?」

「さっき・・言いそびれたことが・・」

「さっきの話か?」

「うん・・・山田のことで・・」

「山田がどうしてん」

「その話を聞いた時に・・・山・田も一緒に・・」

「・・・ほんで?」

「ぎゅっと・・・抱き・・」

その後のことは言わせてもらえなかった。

「香澄・・家に帰ってからにしてくれ・・」

その声は怒っているように聞こえた。

繋いでいる手もさっきより強くなり電車で帰ると思っていたのが、

通りかかったタクシーに乗せられ家に向かった。

「あの・・」

「後にしてくれ・・」

そのまま会話は止まり、家に着くまでは話すことができなくなってしまった。



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