サンドリヨンに憧れて
「なぁ香澄、サンドリヨンって知ってる?」

「それ何語?」

「フランス語でシンデレラ・・っていうねんて」

「サンドリヨン・・・へぇー知らんかった。なんかこっちの言い方の
ほうがよく聞こえへん?」

「意味は一緒やけど、私もフランス語のほうが好きやねん・・」

「じゃ・・これからサンドリヨンって言おうかな?」

「香澄・・25歳すぎた女は・・・もう言ったらあかんと思う」

「痛い所つかんとってや・・・」

藍子がスマホを鞄に閉まい帰る準備を始めた。

「香澄・・送って行こか?」

「ええよ。1人で帰るから・・・」

「じゃ楽しい休日を・・飲んでばかりじゃあかんで」

「はいはい、素敵な休日を・・ダーリンによろしくー」

「じゃ・・お先・・」と帰って行った。

このバーはもう何年も通っているお店だったので気兼ねなくゆっくり飲めるので、

1人になっても平気だった。

このお店は藍子以外会社の人に教えることはなかった。

つきあっていた男にも教えることはなかった。それぐらい大事にしたいお店だった。

もうすぐ12時・・・そろそろ帰ろうとした時、お店の扉が開いた。

スーツ姿の男性が1人で入ってきた。

バーテンダーの哲也さんが久しぶりと声を掛けていた。

「お久しぶりです・・・」と哲也さんに言葉を返していた。

その男性は私の席から一つ開けて座った。

この声・・・あれ?似てる・・・まさか・・・

気になって横目でちらっと男性を見ると、

その人は・・・同じ部署の課長だった。

こんな所で出会うなんて偶然って怖・・・と少し驚いた。

通称・・・営業の王子様・・加藤孝男・・30歳独身。

独身女子社員なら一度は抱かれたいと思うぐらい男前で

背も高くて、見かけは全く問題なし。

だけど・・・仕事には厳しい人だった・・・。

妥協もしない・・・間違ったことなら上司でも許さない。

そんな課長を私は・・・鬼軍曹と呼んでいた。

入り口に近い席に座っているので、帰りずらくなってしまった。

おかわりをして、暫く帰るのを止めた。
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