サンドリヨンに憧れて
準備も終わって繁華街に向かい、父のお店の通りを歩きはじめた。

店の前に立っている人や、近所のお店の人が私を見ては軽く会釈をしてくれた。

私一人ならいつも声を掛けるけど、今は隣に彼がいる・・・

もう数分後には知り合いには噂が広がりそう・・・そんな気がしながら歩いていた。

「香澄・・みんなが見てるな」

「だって孝男さんと歩いてるし・・・」

「え?俺?」

「そうです。私はこの道を男性と通るということは・・相当な覚悟なんです」

「それはどう言う意味や?」

「きっと父の耳にはもう入ってますよ。もうすぐ男と一緒に来るって・・・」

「マジか?」

「はい・・そう言うところですから・・・この辺は」

「じゃ・・変なことできひんな」

「顔が知られている人なら無理ですね」

「気をつけなあかんな・・・」

「そうですね」

父のお店の看板がだんだんと近づいてきた・・・

「いつもなら気兼ねなく入っていた店やのに・・緊張するなぁ・・」

「私もです。自分の親の店やのに・・・」

「よし・・行くか」

扉を開けて中へ進むと、営業スマイルの母がこっちを見ながらやってきた。

「あら!加藤さん、いらっしゃい・・まぁ・・今夜はお連れ様がいるんやね」

「・・こんばんは・・ご無沙汰してました・・」

「あの・・・ママ・・・」

「あら?どっかで見たと思ったら・・・香澄やんか」
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