サンドリヨンに憧れて
「どうして追いかけなかったんですか?」

「追いかけても俺じゃ無理やったんや・・・」

「まだ高校生だから?」

「そうやな・・未成年じゃ何もできひんやろ・・」

「じゃ・・彼女に待ってもらうことは出来なかったんですか?」

「彼女には・・そんな時間なかったんや・・」

「え・・・それって・・」

「結局・・海外に行って変わったみたいやな・・・彼女は結婚したんや」

結婚していることを聞いてほっとしている自分にさっきの嫌な予感

がこれで終ったと思っていた。

「けどな・・今の電話で・・久保と話をして知った・・・」

「彼女は・・・一人になって戻ってきたって・・・久保も彼女と偶然会ったらしい」

「じゃ美鈴さんは?」

「会ったって言ってた。でも過去の話はしてない・・」

「お兄さんはこのこと・・」

「知ってる。会って話をしたらしい・・・。そこでビックリすること聞いたんや・・」

「何ですか?」

「彼女は・・・病気なんや・・・久保も病院で会ったんや・・・でも俺は会うこともない
だから・・香澄は何も心配せんでええから・・・」

そう言われてうんと返事はしていたが、心の中ではそうは思っていなかった。

なんか嫌な予感をふと感じてしまった・・・

王子に出会ってハッピーエンドの物語なんて・・・本だけの話・・・

現実はそうは簡単にハッピーエンドにはならない・・・

その後は何もこのことを話することは無かった。
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