アクアブルーのラヴソング
14
朝八時。
ぼくは、自宅から一番近いところにある駅にいた。
この日、ぼくと美耶子は、電車に乗ってサンフランシスコまでふたりで遊びに行く約束をしていた。
パーティの終わった夜に、美耶子から彼女が日本に引っ越すという突然の告白を聞かされてから、もう一週間以上経っている。
この一週間は、サンクスギビングのため学校は休みで、ぼくはできるだけ多くの時間を美耶子と過ごしたかったのだが、彼女のアメリカでの最後の家族旅行と、ぼくの家の家族旅行が入れ違いにあり、会うことができるのは、連休の終わりの、この日曜だけだった。
ぼくは木陰のベンチに座り、葉の隙間からこぼれてくるまぶしい陽の光を眺めた。
ぼくが美耶子と過ごす最後の日だというのに、のん気に燦々と輝いている太陽を少し恨めしく思いもしたが、とりあえず、晴れてくれたことには素直に感謝した。
やがて、ロータリーに美耶子の家の黒いバンが姿を現すと、ぼくは立ち上がって、彼女を迎えに行った。
美耶子は車の助手席のドアを開けると、「Hey!」と、満面の笑みを浮かべてぼくに挨拶した。
ぼくは、この笑顔を明日から見られなくなるのかと思うと、心がショベルカーで掘り削られるような痛みを覚えた。
「じゃ、お父さん、駅に帰ってきたら電話するね」
美耶子は空いた窓から運転席の父親に声をかけた。
ふと、彼とぼくの目が合った。ぼくは軽くおじぎをした。彼はそれよりもさらに軽いおじぎで応えると
「あんまり遅くなるなよ」
と言い残して、さっさと車を発進させた。
ふたりで並んで、去りゆく車を見送りながら、ぼくは横で無邪気に手を振る美耶子に尋ねた。
ぼくは、自宅から一番近いところにある駅にいた。
この日、ぼくと美耶子は、電車に乗ってサンフランシスコまでふたりで遊びに行く約束をしていた。
パーティの終わった夜に、美耶子から彼女が日本に引っ越すという突然の告白を聞かされてから、もう一週間以上経っている。
この一週間は、サンクスギビングのため学校は休みで、ぼくはできるだけ多くの時間を美耶子と過ごしたかったのだが、彼女のアメリカでの最後の家族旅行と、ぼくの家の家族旅行が入れ違いにあり、会うことができるのは、連休の終わりの、この日曜だけだった。
ぼくは木陰のベンチに座り、葉の隙間からこぼれてくるまぶしい陽の光を眺めた。
ぼくが美耶子と過ごす最後の日だというのに、のん気に燦々と輝いている太陽を少し恨めしく思いもしたが、とりあえず、晴れてくれたことには素直に感謝した。
やがて、ロータリーに美耶子の家の黒いバンが姿を現すと、ぼくは立ち上がって、彼女を迎えに行った。
美耶子は車の助手席のドアを開けると、「Hey!」と、満面の笑みを浮かべてぼくに挨拶した。
ぼくは、この笑顔を明日から見られなくなるのかと思うと、心がショベルカーで掘り削られるような痛みを覚えた。
「じゃ、お父さん、駅に帰ってきたら電話するね」
美耶子は空いた窓から運転席の父親に声をかけた。
ふと、彼とぼくの目が合った。ぼくは軽くおじぎをした。彼はそれよりもさらに軽いおじぎで応えると
「あんまり遅くなるなよ」
と言い残して、さっさと車を発進させた。
ふたりで並んで、去りゆく車を見送りながら、ぼくは横で無邪気に手を振る美耶子に尋ねた。