アクアブルーのラヴソング

16

ELD(英語がまだ流暢に話せない人のためのクラス)に、新しい日本人がやってきた。
ひとつ年上の男の子で、ぼくと同じ千葉県出身だそうだ。
次の生物学のクラスも一緒だったので、ELDが終わると、ぼくたちは連れ立って次の教室へと向かった。
アメリカに来るなり髪をピンク色に染めたという、大胆で人見知りをまったくしなさそうな彼なら、きっとすぐにこの学校の日本人のグループと仲良くなって、徐々に現地の友達の輪も広がって行き、順調にアメリカライフを満喫するのだろうと思った。
気さくに話しかけてくれる彼の人柄に、ぼくは惹かれるものを感じたが、自分は彼にとってはただの通過点にすぎないであろうことを考えると、初日から仲良くなりすぎるのは、賢明ではないように思われた。
「彼女とかいないの?」
女の話は、初対面の男が親交を深める入口としては、おそらく最も普遍的な話題だ。
下手に親交を深めたくないぼくは、慎重に答えた。
「いるよ」
「マジでっ!パツキンでグラマーのおねーちゃんですか?」
「いやいや・・・。あ、ちょっと先生と話してくるね」
生物学の教室につくと、ぼくは宿題を提出するついでに、先生に事情を説明して、彼を自分と同じグループに入れてもらった。
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