恋、物語り
ユウコはクスクス笑って
赤面した顔を私に向けた。
「したっちゃ、したけど。
……コバにしがみついた時にほっぺに、ね」
本当は口にしたくて狙ったけど顔背けられたの。まぁ、それでも嬉しかったけど。
と、付け加えたあと「コバも真面目で純情だねー」と言って手を振って教室へ戻って行った。
足がガタガタ震えた。
ナツキがそんな私を抱きしめた。
「……口、じゃなかったんだ……」
安堵の言葉が漏れる。
頬だけでも、彼がユウコに触れた事実が悔しくて悲しかったけれど、
あの唇が、他の人の唇に落とされたわけじゃなく安心して涙が滲んだ。
「アヤ……コバ、口は守ったって」
ナツキが私を抱きしめながら耳元で囁く。
背の高くない彼が、唇は必死で守った。
「嫌だけど…ムカつくけど…でも……」
良かった。
そう声に出す前に「アヤ」と、愛しい声が聞こえた。