恋、物語り
小林くんと歩く帰り道が、少しだけ緊張した。
彼はいつもと変わらない笑顔で話しかけてくれたけれど、はにかんだ笑顔を返すことしか出来なくて。
彼の家に着いた時には、彼の口数も減っていた。
「お邪魔します」
靴を揃えて、いつものように階段を上がる。
彼はいつものようにキッチンへ飲み物を取りに行く。
この8ヶ月、来る時はいつもこんな風。
部屋のドアを開けると、いつもは気にもとめないシングルベッドが目に飛び込んで顔が赤くなる。
そして、回っていない頭で彼の家を訪ねたことを、ほんの少し後悔した。
「アヤ?」
「……ひゃっ!」
「どうしたの?入んなよ」
ふいに呼ばれて、両肩を上にあげて大袈裟に驚いてしまった。
ベッドを見ていたなんて言ったら、彼は笑うだろうか。