恋、物語り
中島があーでもない、こーでもないと話す彼の言葉が半分以上耳に入ってこない。
時々名前を呼ばれ「うん」としか返せなくて。
段々表情が曇って行く彼のサインを見逃していた。
「アヤ、まだ…怒ってるの?」
彼の情けない声が耳に届いた。
「え?お、怒ってないけど…」
「いつもと違うから…」
きっと彼は、また私と離れたくないと言うだろう。
離れられないのは、私の方なのに…
「…帰る?送るよ?」
黙る私に彼は膝をついて、よいしょと立ち上がる。
不安にさせているのは私で。
でも、「エッチしたい?」なんて聞けなくて…。
彼はドアの前に立ち、正座して動かない私を見つめていた。
「…早くおいでよ。帰ろう」
彼の言葉に頷いてしまったら、きっともっと彼を不安にさせる。
ーーそして、私も不安になるだろう。
だから……
「小林くん……」
一世一代の
賭けに出たのーー…