恋、物語り
「待たない」
そう悪戯っぽく彼が笑って、制服に手をかけた。
「ちょっ…ひゃ…」
心臓が押しつぶされそうで、目を固く閉じた。
その先で、この8ヶ月が走馬灯ように流れる。
まるで、映画を見ているように…。
「アヤ…」
滴る汗が落ちてくる。
「小林、くん…」
交わる声が、心地よくて。
この一瞬が、とても大切で。
恥ずかしさも確かにあった。
そして、少しだけ痛かった。
でも、その何倍も心が満たされて溶かされていく。
気持ちいいとか、そんなのは感じなかったけど、
壊れものを触るように私に触れる彼の手が
とても、とても暖かくてーー…
夢を見ているんじゃないかと、錯覚するくらい幸せで。
「ん…こばや……
……け、ケイ、スケ……」
初めて呼んだ彼の名前に、彼は一瞬ビックリしていたけれど、すぐに笑って喜んだ。