恋、物語り



「じゃあね。また明日」

自分の家の前、繋いだ手が離れていく。
初めて感じたありえないくらいの寂しさが、私の心を支配して行く。


「小林くん…寂しいよ」

いつもより積極的なのは、きっと彼と結ばれたから。


「明日、会えるから、ね?」

子どもに言い聞かせるように、彼は私の頭をポンポンと撫でる。
彼の触れる場所が、熱くなり
彼の一挙一動が、私を彼に溺れさせる。



30メートル先の曲がり角、やはり彼は振り返り私に手を降る。
大きく手を振って、やがてその手には冷たい空気が触れた。




家に入ると、母が出迎えてくれた。
少しだけ顔が見れなかったけれど、母は気付いてか気づかない振りか、いつもと変わらず接してくれる。


「おかえり、アヤ。彼氏んち行ってたの?」

「あ、うん」


仲良しだねー。と、姉は夕食の唐揚げを摘み食いして笑う。



なんでも話せる姉だけれど、
もし、私が彼氏と初エッチして来たなんて言ったら、みんなはどう思うんだろう。
そう考えたけれど、言うのはやめた。
やはり恥ずかしさが勝った。

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