恋、物語り
ドアを開けると
シーンという音が聴こえて来るのではないかと思うほど静かだ。
「あ、あの。立花さん…」
名を呼ばれた方には
アキコと同じクラスの男の子が立っていた。
見たことあるけど話したことはない。
特別目立つグループにいるわけでもなく
地味な男の子でもない。
少しワックスをつけて立たせた髪と
香水かワックスの甘い匂いが鼻を刺激した。
「あの、俺のことわかる?」
「え…っと。小林くんだよね?4組の」
そう!知っててくれてたんだね。
と、彼は屈託無く笑った。
そんな可愛らしい笑顔をする人だなんて知らなかった程、私と彼は“見たことある人”程度の関係だ。