恋、物語り



ミツルの家は何度か入ったことはあるけれど
こんなに居心地が悪いのは初めてだった。


転がる缶はお酒で。
法律違反ということをみんな分かっていない。

少し酔った小林くんが
「明日は学校休みだし…アヤ、どっか行く?」
と唐突に言う。


「明日、用事あるから…」
咄嗟に出る嘘が部屋に響く。
けれど「ふられてやんのー」とみんなまくし立てた。


居心地が悪い。
私、笑えてるかな。


「お酒なくなったから買ってこようか」
誰かが言ったのをキッカケに
「あ、私そろそろ帰るね」と告げた。


送ると言った小林くんを断ったが、そのあとジャンケンをして負けた中島くんが「酒買いにいくついでに送ってくよ」と言った。


ドクン、ドクン。
心臓が痛いくらいに波打つ。



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