恋、物語り
「アヤ!」
ふいに掴まれた腕に
体はバランスを崩して倒れた。
けれど、地面に体はついていなくて
私の体には、人間の暖かい体温が感じられる。
見上げると、やはり小林くんがいた。
「な、泣いてるの?」
「え!泣いてないよ!」
懸命に腕で目をこすった。
メイクが落ちるとか、そんなこと考えもせず。
「ごめん、俺のせい?」
「違う!」
違う…違う。
彼のせいじゃない。
ただ、自分の気持ちが見えたときに失恋した。
その虚しさと悲しさ。
叶わない想いがあって。
消えてしまいたいと思ったの。
「ごめん。ほんと…調子乗ってた」
彼はまだ私に謝罪している。
「ほんと違うの。小林くんのせいじゃないの」
何を言っても信じてもらえないだろう。
送るよ。彼はそう言って私の隣を歩いた。