恋、物語り
4.初めての
8月に入った。
約束通り、ナツキと海に行く日、張り切って5時に起きてしまった。
新しく買った水着は初めてのビキニ。
友達と海は初めてで少し緊張する。
「いってきまー…」
挨拶をして家を出ようとした時、リビングで携帯が震えている音が聞こえた。
急いでバッグの中を確認すると、携帯が入っていないことに気が付いて慌ててリビングへ戻る。
「あった、あった」
リビングにあるセンターテーブルの上。
いつもの定位置に携帯は置いてあった。
メール受信の表記がされていたので、そのまま開く。
メールは3件来ていた。
ナツキから2件。
そして、彼から1件。
ナツキの内容は、駅に向かうことを知らせるものだった。
間違えて同じメールが2件届いてる。
そして……
[おはよう。今日はナツキちゃんと海だっけ?
アヤの水着姿見てみたいな笑
楽しんできてね!
俺はこれから友達と会ってくるよ]
あの後……
お祭りの後……
彼は私の家まで送ってくれた。
そして「また前みたいにメールとかして良いんだよね?」と、力なく言っていて、私が頷くと笑顔で帰って行った。
あれから、メールは毎日している。
けれど、会うことはなかった。
そして、彼がよく使う友達の表記…
これはきっと中島くんのことなんだと思う。
私に気を使ってか、彼は中島くんの話を一切しない。